ADX2のMIDI機能〜「デジボク地球防衛軍」での活用例〜
皆さん初めまして。研究開発部の高橋です。
今回は、ADX2の機能と、その採用事例を紹介します。
その名も「MIDI機能」です。
本機能は、株式会社ディースリー・パブリッシャー様の「ま~るい地球が四角くなった!?デジボク地球防衛軍 EARTH DEFENSE FORCE: WORLD BROTHERS」(以下、デジボク地球防衛軍)に採用いただきました!
サウンド演出を担当されているのはサウンドエイムス様です。この機能を知っていただくには、実際のゲーム動画を見ていただくのが早いので、こちらをご覧ください!
おわかりいただけたでしょうか?
なんと、プレイヤーのキャラクターに応じて、メロディーの楽器が変わっています。
この、「音色切り替え演出」を、MIDI機能によって実現しています。
MIDIとは?
MIDIとは「Musical Instrument Digital Interface」の略称で、電子楽器の共有規格です。
楽曲を構成する一つ一つの音符が電子情報になっており、電子楽器の楽譜、という認識が近いかもしれません。
そして、今回の「音色切り替え演出」は、それぞれの音符に対して実際に鳴らす音を、様々な楽器の音に切り替えることで、実現しています。
音色切り替え演出について、詳しく
デジボク地球防衛軍では、メロディーパートを抜いた演奏の音源に、MIDIによるメロディーを重ねて再生しています。
CRI Atom Craftでの編集画面は以下のようになっています。
MIDIの演奏に特化した「MIDIキュー」です。メロディーラインが線で表示されています。
デジボク地球防衛軍では、プレイヤーのキャラクター(ブラザーといいます)が、出身で分かれていたり、過去作品のキャラクターも登場していて、総勢100体以上もあります。ブラザーそれぞれで音色を変える、という演出を、メロディーパートをMIDIにすることで実現しています。
様々なブラザー。カウボーイならハーモニカ、メイドさんならにゃんにゃん風など…音色はブラザーにちなんだものになっています。聞き比べてみてくださいね。
すこし脇道:MIDIと内蔵音源
MIDIであるということは、それぞれの音符について、どのように音を鳴らすかを自由に決められる、ということを意味します。 今回は、音色を変えることで、曲の雰囲気がバリエーション豊かになりました。 実は、この「電子楽器の楽譜」を演奏する仕組みは、ゲーム業界ではかつて主流でした。 いわゆる「内蔵音源」と呼ばれるものです。 1990年代後半から、ゲーム音楽は、内蔵音源から生音の再生へ移り変わってきました。 これによって、高音質の音楽をゲームで鳴らせるようになりました。 オーケストラやギターといった、内蔵音源での再現が難しい音を、生のままゲーム内で再生できるようになったのです。 しかし近年は、生音だけでは実現できない、インタラクティブ性のある音楽演出が求められてきています。 ゲーム自体の最大の特徴である、ユーザの操作を受け付けてゲーム展開が変わる特徴を、音の演出にも適用したいということです。 インタラクティブミュージックを表現するひとつの手段として、MIDIにも再度スポットライトが当たっているのです。 また、MIDI機能のメリットとして、ゲームの容量削減効果もあります。 単に音色を切り替えるだけならば、MIDIの技術を使う必要はありません。 音色パートを、別の波形として、演奏パートと同時に再生すればよいのです。 ですが、ここにはゲーム自体の容量が大きくなりすぎてしまうという問題があります。 仮に1曲の長さを1分として、100音色あれば、1曲を保持するのに(演奏パート含めて)101分ぶんの容量を使ってしまうことになります。 これが、MIDI機能を使うと大幅に容量を削減できます。 MIDI機能では、ある楽器に対して1つの波形を保持しておけばよいので、楽器を1種類増やすごとに必要な容量は、波形数秒ぶんに抑えることができます。
CRI Atom Craftの画面紹介
ここでは、CRI Atom CraftでのMIDIキューの作り方を、動画で説明します。
なお、本機能は開発中であり、正式リリースの際は作成プロセスが変わる可能性があることをご了承ください。
※動画中では、サウンドエイムス様が作成したCRI Atom Craftプロジェクト上で操作を説明しています。
MIDIキューの作成に必要な作業は以下です
1.MIDIファイルをマテリアルとして登録
2.MIDIキューを作成
3.サウンドプログラム(音色)の作成
4.MIDIキューへのサウンドプログラムの設定
以下の動画中では1は省略し、2〜4を説明しています。
MIDI機能専用に用意したCRI Atom Craftの、波形の割り当て画面です。ある波形がどの音程を表すか、またどの範囲をカバーするか、を指定します。ひとつの波形をピッチ変更することで、複数音程をカバーします。このピッチ変更処理も、ADX2の内部で自動的に行っています。
サウンドエイムス様よりコメント
ここで、サウンドデザインを担当された、サウンドエイムス様から、MIDI機能をご利用いただいた感想をいただいていますので、紹介します。
この度は機能拡張、誠にありがとうございました。 最初は、大量のアクショントラックを埋め込んでデモを作ってたのですが、 なかなか大変でしたので、「MIDIなどで再生できないですか?」 とご相談させて頂いた事がきっかけでした。 トラックが増えていく様なインタラクティブミュージックは多くあると思いますが、 キャラクターによって主メロが変わるようなものは無かったので、 本ゲームで採用したいと考えていたのですが、 WAVベースでの実装には容量的にも、効率的にも相性が悪かったので困ってました。 内蔵を組んでいた頃は簡単に出来ていたのですが、 WAVベースでの開発になると音質は上がるかもしれませんが、 ゲーム的な音表現を考えると弱い所もあったり、 レンダリングのコストを考えると手間でしたので、 今回は、大きな時間と容量の節約になりました。 ツールもすぐにプレビューできますし、セッションで複雑な動作も確認できますので、 100キャラ近い再生確認も簡単に行うことができ、 MIDIノートに対するサンプルの登録もサンプラー的な感覚で 迷うことなくスムーズに作業ができて大変助かりました。 その他、ADX2の再生速度もそのままMIDIに反映できますので、 WAVだとエフェクトまでかかってしまいますが、問題無かったです。 ゲーム中ある条件を満たすと楽曲のスピードが動的に変わりますので、 是非プレイしてみてください。
最後に
CRI Atom Craftの新機能、MIDI機能について紹介いたしました。
ここで一点ご注意です。このMIDI機能はまだ一般公開に向けて開発中で、現在リリースしているADX2には未搭載となります。
ご利用いただきたい場合は、法人様に限り個別リリースできますので、ご興味ある方はテクニカルサポート、もしくはCRI営業担当にお声がけください。
実は、本機能はサウンドエイムス様からのご依頼をいただき、開発が始まりました。
結果、ADX2の中でも目新しい機能となり、サウンド演出に新しい華を添えられたのではないかと思います。
サウンドエイムス様、どうもありがとうございました!
サウンドの演出について、実現したいことやアイデアがあれば、お気軽にCRIへご相談ください。
ADX2の使い方のご提案のほか、MIDI機能のように、ADX2の機能追加にも繋がることもあります。
宜しくお願いします!
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