ゲームサウンドクリエイターインタビューVol.5 ー岡本仁志ー


ゲームサウンドクリエイターインタビューも第五回となりました。

今回お話をお伺いしたのは様々なタイトルのサウンド制作・実装に携わっているフリーランスの岡本仁志さん。
豊富な経験を糧にゲームサウンド現場の第一線で活躍する岡本さんに、これまでのこと、これからのことを聞きました。


―クリエイタープロフィールー
岡本 仁志
サウンドデザイナー(フリーランス)

<制作に関わったタイトル>
サウンドエフェクト
・ポケットモンスター ソード・シールド(株式会社ポケモン)
・ポケットモンスター Let’s Go ピカチュウ Let’Go イーブイ(株式会社ポケモン)
・ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン(株式会社ポケモン)
・ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP (ジェムドロップ株式会社)
・狼と香辛料 VR1&2(Spicy Tails)

―Web―
https://studio10.jp/

 

―まずはご経歴を教えてください。

小学1年からエレクトーンを習い、高校生で作曲に興味を持ち、独学で勉強。
大学進学後はプロの作曲家を目指してバンドや個人の作曲活動を行ったものの、上手く行かず。
そこで心機一転して公務員試験を受けるも、これも上手く行かず・・・。
結局、大学卒業後に専門学校に入って勉強し直し、なんとかゲーム会社に内定をもらうことができました。
その後は何度か転職をしつつ、2017年にフリーランスとして独立し、現在に至ります。
 

―色んなことに挑戦されてきたんですね。現在のお仕事内容について教えていただけますか?

フリーランスとして、ゲームの効果音制作を中心に活動しております。
ただ効果音を制作するだけではなく、ゲーム会社勤務経験を活かし、必要な音データの洗い出しから演出方法の提案、各種ミドルウェアやツールを使ったデータ実装など、
実際のゲーム上での鳴らし方まで含めたサウンドデザインも行っております。

また、ロードバイクで移動しながらフィールドレコーディングを行い、オリジナルの効果音ライブラリを作ることにも取り組んでいます。

 

―ご自身のサウンドに大きく影響を与えたと思える人、出来事は何でしょうか?

やはり、すぎやまこういち先生ですね。
FC版のドラクエ2で衝撃を受け、その後、カセットテープにドラクエの曲を録音して、ひたすら聞いていました。
当時習っていたエレクトーンでも、ドラクエの曲はよく弾いていました。
それと、一度だけすぎやま先生とお会いしたことがあり、それが今でも自慢です(笑)。

20年ほど前の駆け出しの頃の話ですが、すぎやま先生が楽曲を担当されていたゲームの移植案件に参加させて頂いたことがありました。
先輩の元で効果音移植を行っていましたが、その時に一度だけお会いしました。

効果音での影響ですと、小学生の頃に放映されていた仮面ライダーブラックです。
変身するために構える時、「ムチムチ」という音が鳴るのですが、
ある時、その音がミカンを強く握った時の音に似ていることに気付き、ひたすらミカンを握り潰してました。

 

―ミカンを…納得いく音が聞けたのかが気になります。

再現度は悪くなかったと思います(笑)
あくまで、小学生レベルですが。

ただ、満足できる音を出すのは難しかったですね。
というのも、みかんの皮と食べる部分にある程度の空間がないとそれらしき音が出せず、そして、空間があるみかんが少なかったからです。
結果、家にあるみかんを握って音を確認し、その後はみかんを食べるということを延々と繰り返していました。
 

その頃からSEに対するこだわりが感じられますね。制作・実装において心掛けていること、モットーなどはありますか?

効果音制作やサウンドデザインで心掛けていることは、音を聞いた時にユーザーに違和感、不快感を感じさせないことです。
極端な例ではありますが、革靴を履いたキャラが渇いたコンクリートの上を歩いていた時、
そこで、「びちょっ」という水っぽい音が鳴ると、ユーザーは違和感を感じます。
その「びちょっ」という音をハリウッド映画のトップクラスのサウンドデザイナーが作ったとしても、同じことですよね。
ユーザーに違和感、不快感を感じさせないことが大前提であり、
それをベースに、各ゲームタイトルに合わせた最適のサウンドデザインを構築することを心掛けています。

 

―ゲームサウンド制作におけるお気に入りのツール、ソフト、リスニングデバイスなどがあれば教えてください。

サウンド制作とは直接関係ありませんが、Stream Deckというツールが最近のお気に入りです。
元々、動画配信者向けに作られたハードウェアですが、
ボタン一つで指定したWebページやファイル、フォルダなどを開くことができ、
また、各アプリのショートカットや、それらを複数組み合わせたマクロなども登録できる便利なツールです。
デザインもおしゃれでサイズもコンパクトなので、作業机の上に置いておくだけでテンションあがりますよ!

サウンド系の機材ですと、Padshop というシンセサイザーをよく使います。
CubaseやNuendoに標準で付いてくるグラニュラーシンセですが、良い意味で予想を裏切ってくれるサウンドが作れます。
単品でも販売されてますので、おススメです!

 

―ゲームサウンド制作以外で、今精力的に取り組んでいることはありますか?

ロードバイクに乗って郊外を走って、フィールドレコーディングして、写真を撮ってという活動をしています。
将来的には、この3つを重ねて収益が出ることをしたいですね。


 

―今後ゲームサウンドで実現したいことはありますか?

今後もゲームサウンドの質を上げたり、制作の効率化を図れるような技術やツールが出てくるはずです。
これらはもちろん大事(+ありがたい!)な事ですが、ゲームに音を付ける本来の目的は、ユーザーが楽しくゲームを遊べるようになることだと考えています。
そのことを忘れずに、ゲームサウンド制作に取り組んで行きたいと思います。

 

―ありがとうございました!


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