ゲームサウンドクリエイターインタビューVol.3 ー弘田佳孝ー

ゲームサウンドクリエイターインタビューも早いもので第三弾となりました。
今回お話をお伺いするのはTTSプロダクツの弘田佳孝さんです。
ご自身で楽器も演奏するため、コンポーザーとしてだけでなく演奏家として、ライブなどにもひっぱりだこの弘田さん。
そんな弘田さんに焦点を当て、質問に答えていただきました。



―クリエイタープロフィールー
弘田 佳孝
サウンドクリエイター

<制作に関わったタイトル>
サウンドエフェクト
・ファイナルファンタジーVI,VII,VIII(スクウェア)
・パラサイト・イヴ(スクウェア)など

ゲームコンポーザー(アレンジ・リミックスを含む)
・シャドウハーツシリーズ(アルゼ)
・ヘラクレスの栄光 魂の証明(任天堂)
・アルトネリコ3 世界終焉の引鉄は少女の詩が弾く(ガスト)
・グランマルシェの迷宮(スクウェア・エニックス)
・EGGLIA~赤いぼうしの伝説~(ブラウニーズ)
・シアトリズム ファイナルファンタジー オールスターカーニバル(スクウェア・エニックス)
など

YOSHITAKA HIROTA OFFICIAL WEB
http://www.tts-products.co.jp/yoshitakahirota/

株式会社TTSプロダクツ
http://www.tts-products.co.jp

 

―まずはご経歴と、現在の主な仕事内容などを教えてください。

ベースの演奏や写譜(レコーディング用の楽譜書き)の仕事をしながら、和声学や作編曲法を学びました。
その後、スクウェア(現スクウェア・エニックス)の、スーパーファミコン、プレイステーション等の
内蔵音源を使ったサウンドエフェクト制作に従事し、
(『ファイナル・ファンタジーVI,VII,VIII』『クロノトリガー』『聖剣伝説3』『パラサイト・イヴ』など)
同時にフリーランスとして作曲やリミックスの仕事をしていました。

『シャドウハーツ』シリーズや『ヘラクレスの栄光 魂の証明』などの音楽を担当して、
2008年にサウンド制作会社を設立しました。現在まで多くのゲームサウンドを制作しています。

また作曲家・植松伸夫さんのバンド「EARTHBOUND PAPAS」のベーシストとして
アルバム制作や国内外のツアーに参加。
そして、様々なジャンルのアーティストの方々とコラボレーションを行っています。

 

―コンポーザーとしてだけではなく、ミュージシャンとしてもご活躍されているのですね。現在のお仕事内容についてもう少し詳しく教えていただけますか?

様々なプラットフォームのゲーム作品において、音楽、サウンドエフェクト、ボイス、実装などのサウンド制作を行っています。
いずれもゲームの演出にとっては重要ですが、
仕事仲間と話していても、ボイス編集にはまだ改善点や未成熟な部分が多くあるように感じていまして、
とても興味を持っているところです。
CRIさんで開催されたサウンド勉強会でも進行役として問題点を話し合ったり、
私の直近のワークフローを紹介させて頂きました。

またゲームではない分野にゲームサウンド制作の経験をどうやって生かすか、
ということにも興味を持っています。
昨年はイギリス人の映画監督が作った短編映画の音楽を担当しまして、
ゲームが好きな監督と一緒に、ゲームのように没入感のある演出手法というのを考えたりしました。

CRIさんの車載組込み用サウンドミドルウェア「CRI ADX Automotive」も
ゲームではない分野にゲームサウンド制作のノウハウを取り込まれているとのことで、とても興味があります。
 

―まさかAutomotiveの名前を聞くとは……。ありがとうございます。弘田さんはゲームサウンド制作として相当長いキャリアをお持ちですが、ご自身のサウンドに強く影響を受けた出来事や人物などはいらっしゃいますか?

兄がアコースティック・ギター弾きで、プログラムするのも好きだったため、
アナログとデジタルの両面で、幼少の頃から影響を受けていたように感じています。
また作曲家の植松伸夫さんからチェロを頂きまして、一気に演奏にのめり込みました。
最近はレコーディングでも少し使っています。大人になってから始める楽器は本当に楽しいです。
 

 

―制作・実装において心掛けていること、モットーなどはありますか?

音楽、サウンドエフェクト、ボイス、それぞれが世界観を作り上げ、またそれぞれの邪魔をせず、
効果的に絡み合うものを目指しています。
そしてそれらを鳴らす為の仕様決めと実装作業が最も重要だと思っています。

現実と非現実的な音作り、両方を柔軟に使いこなしたいですね。
例えば、自キャラが、滝の後側の空間に回り込んだ時、ユーザーの目の前にある滝の音をどう聴かせるのか、
キャラ視点なのかユーザー視点なのか。自キャラのセリフはどんな風に聞かすべきなのか。
滝を挟んで聞こえるのか、自分が発しているように聞こえるのか。
現実の視点では、ありえない、でも自然な音作りというのは、ゲームならではで、とても考えるのが楽しいです。

 

―ゲームサウンド制作におけるお気に入りのツール、ソフト、リスニングデバイスなどがあれば教えてください。

作曲にはMOTU社のDigital Performerを使っています。
他のDAWにも移行しようと試みたのですが、やはり使い慣れたものに戻ってきてしまいます。
それからボイス編集などには、REAPERがとても便利ですね。
CRIさんのADX2などのツールをもっと研究しながら演出に効果的なサウンド仕様を
プランナーやプログラマに提案していくということは、引き続き取り組んでいきたいです。
あとリアルなツールというか大好きな楽器なのですが、
Gibson社のEB-2Dという1969年製のビンテージのセミアコベースを使っています。
今は調整とリフィニッシュ(再塗装)に出していてしばらく弾けないので寂しいです。
 

 

―ゲームサウンド制作以外で、今精力的に取り組んでいることはありますか?

前述のようにチェロが楽しくてよく弾いています。
今月1/30には、作曲家・伊藤賢治さんの活動30周年記念オンラインライブにゲストで演奏させて頂きます。

ベーシストとしても、参加しているバンドがあり、また近いうちにレコーディングをする予定です。

 

―今後ゲームサウンドで実現したいことはありますか?

ゲームやエンターテインメントの形はどんどん変容していくかと思いますが、
自分の技術を磨き、知見を広めつつ、これからも国や世代を超えて、感覚や感動を共有できていければ良いなと願っています。
 

―ありがとうございました!

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