アバウトなサウンド発注はいけないのか?

以前の記事で「よくない発注リスト」みたいな書き方をしてきましたが、誤解されやすかったので「伝わりにくい発注リスト」に書き換えました。

「発注リストの品質次第で制作がスムーズに進む」のは間違いないのですが、そこに理想の品質まで求めるのは間違っていると思います。

できるに越した事はないんですが、自分も昔は全くできなかった事を考えると意外と経験の要るスキルのような気がします。

また、最初の発注時点で詳細まで決まっていることの方が少ないでしょう。
企画の初期段階では「アバウトな発注で良い」んです。


問題の本質は何だろう?

必要以上にリテイクが増えてしまう

そもそも目指しているゴールが全然違う可能性があるので、それを寄せていく必要があります。
リテイクそのものが悪いわけではなく、リテイクが繰り返される事による時間のロスや、お互いのモチベーション低下に繋がる事が問題なのではないかと思います。


発注がアバウトなままでも理想の音演出が生まれる瞬間はあるの?


動きやエフェクトなど、見た目の動きまで確定したときでしょうか。

それ、割と終盤なんじゃない?

と思ったあなた。そうなんです。動きが確定するまでは音は変わる可能性があります。

例えば『STAGE CLEAR!という文字がドーンと大きく表示される音』を考えてみます。表示のされ方を想像してみましょう。

・画面外、右側から「シュッ」と素早く流れてくる
・画面外、上から落ちてきて「ズシーーーン!」と重そうに画面が揺れて止まる
・画面外、上から落ちてきて「ぽよん」と跳ねる
・画面に収まらないほど拡大表示されたものが「ギュイーン」と縮みながら適切なサイズになる

いかがでしょうか。
挙げたように「シュッ」「ズシーーーン!」「ぽよん」「ギュイーン」という全く違う音があったら良さそうだなーと感じていただけたら幸いです。できればタイミングもバッチリ合わせたいので、動く速さも決まるとより良いです。


ワークフローでカバーできる

サウンド担当者ができること

・連絡を密にとって方向性を確認していく
・掴みきれない場合は、割とはっきり方向性が違う音を幾つか提案し選んでもらう
・発注者の好みのゲームなどを聞き出し、それらの方向性から探ってみたりする
・仮音が必要な場合、作り込み過ぎず微調整しやすくしておく
・変更されそうな箇所を把握しておく
・大量な変更が一度にされた場合、修正にどのくらい時間が必要かを伝えておく

発注側ができること

・どんな情報が必要かヒアリングを行う
・仮に3回以上大幅なリテイクが必要な場合は、発注側の伝え方がよくない可能性が高いので見直す
・相手はエスパーではないので理想のものを期待しすぎない(その上で予想を超えてきたら嬉しいでしょ?)
・絵と動きがFIXした箇所を、必ずサウンド担当に伝える
・仮に動きに変更があった場合、必ずサウンド担当に伝える

まとめ

・サウンド発注の精度はアバウトでも良い。リテイクも必ずある。あらゆる手段で寄せていく事が大事。
・お互いの作業工程の順番をよく考えて手戻りやリテイクの回数を減らしていくのが、モチベを維持しつつ制作を続けられるんじゃないかと思います。


記事タイトル:より伝わるサウンド発注リストの書き方(ゲームの楽曲編)【サウンド発注その1】

より伝わるサウンド発注リストの書き方(ゲームの楽曲編) 【その1】

記事タイトル:伝わりにくい発注リスト、足りない情報について(効果音 前編)【サウンド発注その2】

伝わりにくい発注リスト、足りない情報について(効果音 前編) 【その2】

記事タイトル:リアル系、電子音系、ファンタジー系のサウンド発注のポイント(効果音 後編)【サウンド発注その3】

リアル系、電子音系、ファンタジー系のサウンド発注のポイント(効果音 後編) 【その3】

記事タイトル:アバウトなサウンド発注はいけないのか?【サウンド発注その4】

アバウトなサウンド発注はいけないのか? 【その4】

kawaguchi

Twitter @CRI_kawaguchi Sound / Haptic / UX Designer @ CRI Middleware. / 音響周り全般と触覚、UXを担当。VRの立体音響も。 ゲーム制作現場の要望をミドルウェア開発チームに届けて、より素敵なコンテンツが生まれやすい未来を作るのが仕事です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です