開発現場の声 – Nintendo Switch『OCTOPATH TRAVELER』ADX2インタビュー – ACQUIRE –
全世界累計100万本を売り上げたNintendo Switch専用タイトル「オクトパストラベラー」。
懐かしくも新しいグラフィック表現やストーリーに引き込まれた方も多かったのではないでしょうか。
今回のインタビューではサウンドの演出部分に注目し、ADX2をどのように活用したか、開発会社のアクワイア様にインタビューを行いました。
Unreal Engine 4 + CRI ADX2
—まず、ADX2を導入したきっかけについて教えて下さい。
アクワイア:はい。今回Unreal Engine 4での開発が初めてだったのですが、別タイトルで「CRI ADX2」を使用していることもあり、開発当初からサウンド部分は乗り換えを前提として開発していました。そのため途中でADX2に切り替えても、とてもスムーズに移行できました。
—そもそもUE4を選んだのは何故でしょうか。
アクワイア:社内に新しいもの好きの開発がいるのと、スクウェア・エニックス様からいただいた諸々の情報を元に選択しました。結果、実現したいことはだいたい実現できたかなと感じています。
キャラクターや世界に厚みを持たせる音
—ボイス量はどのくらいのボリュームだったのでしょうか。
アクワイア:イベントシーンが多かったので必然的に多くなりました。全キャラ合わせて約1万、日本語と英語があるので合計2万ほどありました。全てHCAの高品質で圧縮して640MBくらいですかね。ADX2ではセリフごとにキューを分けています。
—使っているエフェクトなどはありますか?
アクワイア:洞窟に入っている時にリバーブを足したりして、セリフやSEをそれっぽくしたり、というところは行いました。
エフェクトでは無いですけど、洞窟の近くに来たら風の音を入れたりとか、 川の側の位置によって流れる水の音を変えたりといった環境音の演出はサウンドデザイナー、レベルデザイナー、プログラマでそれぞれ設定して音へのこだわりが盛り込まれています。
ボス前の楽曲演出について
—イベント楽曲からボス曲への遷移について、とても自然に移行していますがこのあたりの仕組みを教えて下さい。
アクワイア:ADX2の「ブロック遷移機能」を使っています。基本的には章終わりのボス戦のみ実装していますね。作曲家の西木さんのnoteにも曲の説明が書かれていましたが、イベントシーンの楽曲、つなぎのフレーズ、ボスバトルの楽曲に分かれています。セリフを送るためのユーザ操作をトリガーとして曲の切り替えを指定すると、キリの良いところで自動的に次のパートに遷移し、バトル曲へ自然に繋がるように設定をしています。
試練のために/真実のために/宝物のために/再起のために|西木康智|note(ノート)
—この演出の実装について、苦労した点は?
アクワイア:演出内容を聞いてすぐに『ブロック遷移機能を使おう』となりました。
実装の担当者がADX2を触り始めた頃からその機能の存在は知っていましたし、わかりやすいサンプルがあったので…プログラミングの面では特に苦労しませんでしたね。
サウンド制作をされている方の方で、テーマ曲のどこのタイミングから切り替わっても自然に聞こえるように…という工夫をされて、いい感じのデータが上がってきました。
その他、サウンド制作エピソード
—SE制作周りで何か印象的なエピソードがあればお聞かせください
アクワイア:マップにSEをあてるタイミングではSEリストが未完成だったので、UEのデータ名を検索して、動きそうな物を探しました。データ名の英単語から何の動物かを判断して、「ひよこ」や「りす」の位置を確認しつつ、地道に音を充てました。
捕食を表現するSEが、予想以上に生々しくなってしまい、数回トライしたのですが、最終的にはSEをカットする事になりました。
—他、ADX2で使用した機能はありますか?
カテゴリボリュームによるダッキングは行いました。ショップに入るとBGM音量が下がるところとか。あと、篝火なんかは3Dポジショニングを使うなどして位置によって聞こえ方を変化させています。
他にはサウンド担当者から「ここでこのキューを再生して」と指示をされたものが環境音を止めるようなアクションを設定したもので、その後の音量変化や間の調整はサウンド担当者が行う、といった事もありました。
—ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
CRIのサポートがしっかりしていたのでスムーズに解決していけた事や、演出のために様々な機能を使っていただけている事がわかり、今後も様々な機能の周知やサポートをより一層、充実させていこうと感じました。