【ここまでやるの!?】『ファイナルファンタジーXV』サウンド演出の秘密 – スクウェアエニックス

『ファイナルファンタジーXV』(以下、『FFXV』)にはゲームのサウンド演出として「ここまでやるのか!?」と言いたくなるような新しい挑戦がたくさん詰まっています。
本インタビューではその意欲的で緻密なサウンドデザインの秘密に迫ります!


自己紹介

ーー最初に自己紹介をお願いいたします。

菅沼氏:サウンド部の菅沼です。
ゲーム全体のミックスという作業がありまして、サウンドの仕様周りを決めていく立場でした。また、同時に映画の『キングスグレイブ ファイナルファンタジーXV』の音も担当していました。

佐藤氏:サウンドデザイナーの佐藤です。
『FFXV』の効果音を長いこと作ってきています。開発期間中にスタッフの代替わりがありまして、前のサウンドディレクターから引き継いでサウンドの制作進行管理と、あとはバトル周りとかやっています。

河盛氏:一部楽曲のディレクション、制作の進行管理や大雑把な言い方になってしまいますが、音楽にまつわる色んな事を担当していました。

南氏:主にサウンドのプログラム、サウンドドライバーの実装をメインでやっています。 また、実際に実機用に音楽を入れるデータを作るツールも作っています。

サウンドの挑戦とは

ーー今回はグローバルに向けていろいろと挑戦されていると思うのですが、サウンド面での挑戦した部分なんてのもあったんでしょうか?

佐藤氏:まず、アクションゲームになったというのがあります。どこにでも行けて、昼夜問わず自由に移動も戦闘もできて…システム的な事をいうと『ここで(データを)読み込んで、ここで(データを)捨てて』みたいなものが、いつどこで何が起こるかわからない、という事で本当に一から仕様を作ることが、挑戦の連続だったと言えなくないですね。

今まで曲にちょっと誤魔化してもらっていたような演出も効果音だけになっていたりするので、本当に細かく作らないとダメだなと思いながら作っていました。

菅沼氏:細かい部分は後でたくさんありそうなので、今はボイスに関して。『ファイナルファンタジーXIII』(以下、『FFXIII』)のときに実現できなかった4言語同時発売を達成するのが、非常に苦労した部分ですね。

どの言語がオリジナルになって、それに対してどうやって収録していくかとか、仏独英が、どうやって追いついていくか。まるでドミノ1つ倒したら全部が崩れてしまうような難しさがあったぶん、達成感も大きかったですね。

南氏:プログラム的にはやっぱり、動的な変化を一番重視していて、ゲーム内の環境の動的な変化にちゃんと対応できるようにサウンドドライバーを作っていきました。

菅沼氏:PS4、XboxOneになった事で、できることも随分と増えつつ、これは難しいんじゃないかというのも見えてきたので、プログラマーさんと一緒に仕様を決めていくのも難しいところでした。ただ単にCPUやメモリが増えたからといってなんでもかんでもできるようになったわけではなく…その辺りの葛藤があって時間が掛かってしまいましたね。

ーーPS3、360世代からPS4、XboxOne世代になってグラフィックが綺麗になったのは凄くわかりやすいと思うんですけれども、サウンドにとっても実現できる事が多くなった、という事なんですね。

菅沼氏:そうですね。
また『FFXV』の場合は、ほぼ内製のツールだけで実装までできたので達成感もありつつ、まだまだ直した方がいい部分も見つかりました。そこは面白い点ではありますね。

ーー『FFXV』のBGMなり効果音について、それぞれの魅力についてアピールしていただけますか?ここが聞きどころ、みたいな部分があれば。

菅沼氏:ゲームを始めるとオプションでTVモードかホームシアターかを選べるんですが、そこの違いを作るのにものすごい苦労したので、ぜひ自分の環境に合わせて良い方で聞いて欲しい、というのはあります。ホームシアター環境がある方はぜひ、大きく違うのを楽しんでいただければ。

佐藤氏:今回は制作を進める上で色々と変わっていて、今までのタイトルであれば発注を受けて作って実装して…で終わりなんですけど、『FFXV』の開発チームの中には、仲間班とか生態班などのチームがあるんですが、生態班では「モンスターはこういう挙動をして、ここに隠れていて、そのモンスターに対してこのモンスターが襲いかかって…」みたいな設計作りから参加していました。


これはちゃんとやらなきゃいけないな、ということで、本当にそこのワールドマップにいる生き物たちの鳴き声とか生態とか、どうやったら自然に聞こえるか。耳を澄まさないとわからないんですけど、ちゃんとそこに生きていて、そしてそいつらに殴りかかったらバトルもして…そんなところも性格付けというか。こっちに気付いたら向かってくる敵とか居て、より凶暴に演出したりとか。けっこうそういう世界観作りに注力していましたね。

もう世界に溶け込んでいるので気をつけて聴かないとわからないくらい、馴染んだ感じに仕上がったと思っています。まぁ、たまにはSEだけでも聞いて欲しいな、と思います(笑)

河盛氏:あとでMAGIの話が出てくると思いますが、場所によって曲が途切れずにスムーズに切り替わったり、重要ボス戦では戦闘状況によって曲が展開していき、ボスを倒すと同時にフェードアウトではなく、ちゃんと曲が終了するようになっています。
もしかするとゲームをプレイしていると戦闘する事に熱くなっていて気付かないかもしれないのですが、ちょっと一歩引いて体感してみると、戦闘終了でちゃんと曲が終わるのとかすごく気持ち良くてハマります。一度プレイした皆さんも、もし気付いていないのであれば、気にかけつつ体感していただけたらなと思います。

南氏:プラグラム的には技術的にどうのこうのではなく、やっぱりみんなもっと、サラウンドで聞いて欲しいなっていうのが大きな願いです。ちゃんと音が周りで鳴っているのに聞いてもらえないのは寂しいな、というのは前から思っていたし、たぶんサウンドやっている人間、全員が思っている事なんで。

南氏:ヘッドフォンで5.1chのやつとかでも、TVから聞こえる音と全然臨場感も違って聞こえるので、ぜひサラウンド環境で聞いて欲しいですね。

楽曲の方向性など

ーー作曲担当の下村陽子さんが『FF』シリーズにメインで参加されるのは初だと思うのですが、どういった経緯だったんでしょうか?

河盛氏:企画が立ち上がった当初、世界観とか音楽性がこの作品に一番マッチしているという事だったと思います。

ーーおなじみのチョコボのテーマなんかはどういう経緯でアレンジが決まるんでしょうか?

河盛氏:今回は体験版のあの地方をギターサウンドで描こう、というところから自然とブルースになりました。

MAGIシステムとは?

ーー先ほども少し名前のでたMAGIシステムについて、『FFXV』においてどういったところで活用されていて、どのような効果があったかをお聞かせください。

河盛氏:大きくわけて2つありまして、まず場所による変化ですね。ガソリンスタンドの室内、室外であったり、街の市場や公園といったところで変化するもの。もうひとつはバトルのシチュエーションに合ったもので、ボス戦の展開に合わせて曲が派手になったり、ボスを倒したらちゃんと曲のエンディング部分で終了するとか。

ーーそれは戦闘の推移によって、どの状態からでも曲のクライマックスに移って終わることができる、ということですか?

河盛氏:そうですね。クライマックスには持っていくんですけれど、いきなり飛ぶと問題があることも多いので、その前にクッションとなる部分を挟んでから遷移するようになっています。

ーーその変化していくところが、例えば楽器だけが差し代わったり、楽曲の構成そのものが変わったりとありますが、その辺りのミックスについて、ゲーム中でリアルタイムでボリュームを変えているのでしょうか?

河盛氏:パートの増減も、展開が変わるのも両方やっています。

ーーゲーム中において、たくさんの音が鳴っていると思うのですが、それらの音はプリレンダであったり、リアルタイムにミックスされていたりするのでしょうか?

菅沼氏:プリレンダもありつつ、ほとんどはリアルタイムで行われています。

他社さんの実装の方法でよく聞くスナップショットと呼ばれるミックスの手段があるのですが、『FFXV』でも似たような形になっていて「車に乗っているとき」とか、バトルになればバトル…その中でも「通常」「ボス」「召喚獣」など。さまざまなシーンのシチュエーションごとに変化していくのが特徴だと思いますね。

ーースナップショットについて少し補足しますと、いろんな状況の音のバランスを事前に決めておいて、シチュエーションが切り替わった際にそのバランスに徐々に変化していくものです。

菅沼氏:その切り替わりがわからないよう自然な変化にするのが、自分と南くんの苦労なんです(笑)

もっとも作り込んだ部分は

ーーもっともインタラクティブに調整する必要があったのはどこになるでしょうか?

菅沼氏:やっぱりボスでしょうか。タイタンとかリヴァイアサンが出てきたところは結構印象的だったと思いますね。ボスバトルが始まるというところで、常にいろんなインタラクションが入りつつ、カットシーンが入りつつ、プリレンダのムービーが入りつつ、召喚獣が呼ばれつつ…と、ものすごい展開がダイナミックに行われるので、そこが見せ所かなと。

ーーもっとも挑戦的なサウンドエフェクトに関して、どこに挑戦したかというところも合わせてお聞かせいただければ。

佐藤氏:超個人的には…釣りとかなんですけど(笑)

菅沼氏:さっき言ってたモンスターとかは結構新しいんじゃない?
生態系を作らなくちゃいけないというお題がきて、その生態に対しての色んなアプローチをされていたんで。

ーーもうサウンドじゃないところの作り込みから始まってるわけですもんね。

佐藤氏:僕は説明する側だったので「こういう状況で使われるから、こういうバリエーションをちょっと多めに用意しておいて」みたいなところで苦労しました。

今までは自分でチクチクと作るのが多かったんですけど、いかにバリエーションを増やして、いろんな状況に対応できるようにするか、というのが挑戦でしたね。そして音が増えてしっちゃかめっちゃかになったところを、彼がミックスしてなんとかすると(笑)

ーーセリフのパターンとか、歩いていると仲間たちが勝手に喋ってくれる辺りなんかも挑戦だったのかなと思いますが、いかがでしょうか?

菅沼氏:そうですね、オープンワールドというゲーム性に対してどういうアプローチをするかというのは結構難しいところで。自分たちサウンドの人間がやりたい、という部分と、仲間班のみなさんが台本を考えた上で「こういう風に実装したい」という部分があるので、そのあたりは共有しながら一緒に進めていきました。

ダイアログ(会話)に関してなんですけど、基本的に台本のシステムがありまして、状況の変化によってこのボイスが鳴る、みたいな感じになってます。


適当に走ってたり、あそこに何かありそうだから行こうぜ、みたいなときは大体、日常会話が流れるというシステムになっていまして、襲われたりするとバトルに切り替わったりするんですけど…。 あの4人の会話はおちゃらけてる部分がけっこう多いじゃないですか。日清カップヌードルとか(笑) ああいうのはシリアスなシーンでは流れないようになっています。

同時発音数について

ーーゲーム中において、最大どのくらいの音の数が鳴っているのか…おそらくバトルシーンかと思うんですけど、どんな感じでしょうか?

南氏:そうですね、だいたい平均して常に20音くらいは…主に鳴っているのは、あんまり聞こえにくいんですけど衣擦れとか足音とか、体周りの音ですね。

戦闘中になると、60〜70音くらいがピークで、それ以上出てしまうと音として崩れてしまったりするので、同じような音を鳴らしすぎてると、自動的に古いやつや優先度の低いやつから消していったりするような発音数の処理は随所に。特に戦闘に関しては、入れてる部分が多いですね。

ーー距離的な部分も?

南氏:そうですね、距離もありますし、細かいところでは大きな攻撃音が鳴っているときは衣擦れ音は要らないだろう、だとか。
やはりいつ、どこで、どんな数の敵と戦うのか、最初はわからなかったので、できるだけフレキシブルに対応できるように作っていきました。

ーー70音くらい鳴るとけっこう再生負荷とかもありそうですけど…。

南氏:そうですね、だいぶごちゃごちゃっとなって。危ないところは…タイタンが酷かったですね。周りで炎がゆらゆらしている音も出したりするんで、どの音を鳴らす、鳴らさないとか。それこそ、たくさん音を鳴らしすぎて「次の音が鳴らないんですけど…」みたいのがあったりして、だいぶ細かくデータを調整しましたね。

ーーなるほど、やはりタイタン戦はしっかり音を聞いてみたいですね。

データサイズは?

ーーまた数の話になってしまうんですが、収録曲数や、サウンドのデータサイズがどのくらいだったか教えていただけますでしょうか?

河盛氏:サントラには実はカットシーンなどが入っていないんですけれども、編集したものも含めるとたぶん150とかはあると思います。

ーーサントラは何枚組でしたっけ?

河盛氏:4枚組ですね。

佐藤氏:カーステもありますもんね。

ーーまぁ、それも含めたデータ量が気になりますね。

南氏:それとボイスで、それこそブルーレイに入りきるのかよ、みたいな怖さはありましたね。

菅沼氏:ちょっと話戻っちゃいますけど、今回は4言語を入れなくちゃいけない。

南氏:今回、実はどこのリージョンでも切り替えができて、どこの言語でも聞けるんです。

河盛氏:あれはでも確か、容量から逆算しました(笑)
それだったらこれくらいの曲数はいけるのか…って思いましたけど、自分が思っていたより相当増えましたね。300曲以上は入ってます。

南氏:だいぶ後から追加、追加で…あの曲も、この曲もと入りましたね。

佐藤氏:ディシディアも入るの? みたいな。

一同:(笑)

河盛氏:やっぱり『FF』シリーズって楽曲も人気のあるものが多くて、曲数を削りにくくて、これも入れなきゃな、となった部分も多いですね。

ーーじゃあデータサイズも相当多くなった感じでしょうか?

南氏:そうですね、BGM、SEと全体ではだいぶ多いんじゃないかと思います。
実機用のデータを編集するためのツールで『FFXV』のプロジェクトを読み込むと、だいぶ時間が掛かるくらいには。

自動化された音について

衣擦れ音、足音

南氏:『FFXIII』のときに導入していた、骨の動きで音を鳴らすという技術は引き続き入っていて…

ーー骨の動き・・・?

南氏:足音とか衣擦れの音っていうのは、たぶん普通に考えるとアニメーションの位置に合わせて音を配置していくと思うんですけど、そういう事は一切してなくて、骨がこう動いてここが擦れてるだろうからここから音を出す、みたいなのを人型と・・・四足?

佐藤氏:基本、そのへんですね。

南氏:そのへんのキャラは全部、動きの音に関しては勝手に鳴るような状態になっていて、わざわざアニメーションのデータに音を配置する、なんて事はやっていません。そういうところでコストダウンもしないと数も多いので成り立たないですね。

佐藤氏:それにモーションも複数あるんで。

南氏:そうそう、モーション1個探すのも苦労するんで。

佐藤氏:バリエーションとしては「歩く」「走る」「ジャンプ」「着地」「すり足」とか歩行に関して、地形種ごとにある、と。
「土」「石」「水」「草」など・・・まぁ、物量の仕事ですよね。

ーーそれって例えば敵の大きさとかによらず同じ音を鳴らしているんですか?

佐藤氏:本当に大きいカトブレパスなんかは特別に作ってますけど、基本的に人の背丈から・・・鉄巨人、大型魔道アーマーくらいまでは自動制御してますね。

あと自動発音といえば、今回は歩行だけでなく「揺れモノ」っていうのがありまして。グラディオとかノクトとか、アクセサリをジャラジャラ着けてるじゃないですか。あれも骨の動きをチェックしていて、チェーンが揺れれば音が鳴るんですよ。

モーションブレンドとか結構複雑な動きがあって、アニメーションそのものに音をあちこち付けたとしても、中間の動きの音はちゃんと再生できないじゃないですか。そういった部分もなんとか鳴らしたいので自動化をして、揺れたら鳴る、と。それで結構自然にまとまりました。

ーーそれはもう戦闘中、フィールド関係なく常に鳴っている感じでしょうか

佐藤氏:そうですね。

草木の音

南氏:あと配置とはちょっと違いますが、草木の音に関して。
今回いたるところに草とか木が置かれているので、いちいちそれに合わせて音源を置くのかっていうのが、フィールドの広さもあって「そんなの無理だ」って話になったので、周りにある草木の数をカウントして、その数に合わせて音を鳴らすように。制作コストを下げつつ、ちゃんと聴こえるようにしました。

車のエンジン音

ーー車の走行中、エンジン音とかプロシージャル(自動生成)だったりするのか。その辺りをお聞かせいただけますか?

菅沼氏:そうですね、エンジン音に関してはプロシージャルで鳴らしていて、内製のツールで作られています。

南氏:周りで走ってる車に関しては、(エンジンの)回転数とか変わればちょっと音が変わるような、いわゆる軽量版みたいのを使っていて、メインのレガリアだけはちゃんとエンジン音を作っています。

HCAコーデックについて

ーー今回、CRI・ミドルウェアの音声圧縮コーデック“HCA”を採用いただいていますが、その経緯についてお聞かせいただけますでしょうか?

南氏:そうですね。そもそもの出発点として、まずはゲーム専用機と呼ばれるもの以外のプラットフォーム……いまで言うとスマートフォンやPCでも利用できるコーデックに困っていて、いいコーデックを探していました。HCAはCRI・ミドルウェアさんのサウンドミドルウェア『CRI ADX2』の中で使われる仕様でしたが、“HCA”を内製サウンドシステムに組み入れて使うことができるようになり、今回、使わせていただきました。

ーーなるほど。必要な圧縮コーデックのところだけを利用できた、というのがフィットしたと。

南氏:はい。

ーーHCAはほかの圧縮コーデックと比べて、どんなメリットがありましたか?

南氏:以前はオープンソースの“Ogg”というものを採用していたのですが、それと比べて“HCA”は処理が高速で、同じくらい圧縮ができるというのが、こちらの検証結果として出ていました。しかも、“HCA”はマルチプラットフォームで使えるので、プラットフォームごとに別のコーデックのプログラムを書くというコストも省けますし、データに暗号化を掛けられるので、仮に吸い出されたとしても簡単には流用できないというのも大きなメリットだったと思います。


ーーHCAに限らず、何か他社のミドルウェアを検討する上で、特に重視しているところは何でしょうか?

南氏:まずは既存のシステムと比べて良いものであることが大前提としてあって、組み込みやすさというのも大事ですね。HCAはマニュアルをいただいてから2〜3日で自社のエンジンに組み込むことができたくらい、優秀なAPIで助かりました。他には日本語でサポートされているのも大きいですね。質問を投げてすぐに日本語で返事が来るというのは非常にありがたいです。

ーー最近は英語でのサポートも積極的に行っておりますので、海外の会社でご利用を検討の際もぜひ。


MAGI開発者に聞く

最後に、MAGIの開発者であるサウンド部 サウンドプログラマーの岩本 翔氏に話をうかがった。

ーーMAGIシステムで目指したところをお聞かせください。

岩本氏:MAGIというのは、サウンドの中でも音楽をインタラクティブに変化させるシステムなんですけど、いちばんやりたかったことは、やはりボス戦での演出です。
いままでの『FF』シリーズだと、戦闘があって、リザルト画面にリザルト曲が流れて……という流れがありましたが、今回はオープンワールドでアクション要素が強いバトルということで、ひとつのシーンの中で始まって終わる、という流れになります。音楽もそれに合わせなければいけない、ということで、音楽もいっしょに遷移して、自然に終わるというところを目指しました。

ーーバトルではダイナミックな曲が多いので、曲が盛り上がったところでバトルが終了してしまうとブツ切れ感が出てしまいます。そういった不自然さをなくし、自然に終わるようにするために、MAGIシステムが活かされたということでしょうか。

岩本氏:そうですね。曲によって、盛り上がるところ、静かなところなどいろいろありますが、MAGIシステムで、音楽的にここならちゃんとつながる、というところをあらかじめ設定しておいて、どんな状況でも音楽的に自然に終わるように工夫しました。

ーーふつうにプレイしていると、なかなか気づかない部分かもしれませんね。

岩本氏:気づかれないほうが、よく演出できたということだと思います(笑)
他には、チョコボに乗ったときでしょうか。走っているときの軽快な曲と、歩いているとき、水中でゆったり泳いでいるときなどはフルートのゆったりしたアレンジに切り換わるようになっています。これもできるだけ気づかれないようにゆっくり変わるようになっていますので、じっくり景色を楽しみたいときなどに気づいていただけるんじゃないかなと思います。


インタビューを終えて

いかがでしたでしょうか。『FFXV』では生態系を含めて世界を作り、MAGIというシステムでユーザーに気付かれないように楽曲をスムーズに変化させ、キャラクターの動きや背景の草木の音、エンジン音を自動化することで制作コストを抑え、空間の音演出にもこだわり、4ヶ国語に対応し全世界一斉発売を実現したという・・・。
まさに「ここまでやるの!?」といった内容でした。

サウンドの演出に関して、まだまだ工夫できることが沢山あるんだぞという強い意志のようなものを感じ、今後のゲームのサウンド演出の発展にも期待のできるインタビューでした。